2013/12/11

THE BUNKER - ISSUE 3 " SHORT KAGOUL "

皆様こんにちは

本日は
Nigel Cabournのオーセンティックなアイテムが
どのような開発・製造工程を乗り越え
作り出されているか、
" SHORT KAGOUL "
〜ショートカグール〜
を一例にじっくりご説明します。
画像の英文を訳した内容となります。
それではお楽しみください。

THE DESIGN PROCESS
Nigel CabournAuthentic Line (オーセンティックライン)は矛盾だらけだ。と言う人がいるかもしれない。ニッチなマーケットとグローバルなファンによって支えられている。オリジナルで時代を越えた、流行にとらわれない上品でシンプルなデザイン。同じような製品を見つける事は無いのも、ユニークなデザインであるからだ。そして、誰もがワードロープに必須だと思うアイテムだ。

今回のThe Bunkerシリーズ第2版では、Nigel Cabournブランドでは、どのような開発・製造工程を乗り越え、オーセンティックなアイテムを作り出しているのかを公開することで、本物を作り続けるデザイナーの生き方を共有できるのでは無いかと考えた。そして、デザイナー、Nigel Cabournがデザインのアイデアを具現化し、作品として展開するまでの工程をファンと共有しようと思う。

Nigel Cabournのオーセンティックなデザインは、素晴らしい冒険家による歴史的なイベントや物語等に加え、デザイナーであるNigel Cabournが個人的に所有するレアなミリタリー、アウトドア、スポーツやワークウェアのコレクションから得るインスピレーションから生まれる。それぞれのシーズンのアイデアを練るために、世界中の最も有名で特別なビンテージ服のディーラーやビンテージショップをチェックし、コレクションのテーマにあったアイテムを探す事からはじまる。古着のアイテムから直接的なインスピレーションをうけ、そのアイテムに関する歴史的なストーリーを調査する事もあるし、その逆の場合もある。これらの工程が作品へのシルエット、生地、付属品、そしてコレクション全体の構成につながるのだ。

この一例を説明するために、ブランド独自のシームシール(縫い目をテープでカバーし、防水性を高めるテクニック)の工程と、Nigel 独自のデザイン手法が明確に活かされたAW13コレクションのShort Kagoul (ショートカグール)の話をしようと思う。

SHORT KAGOUL(ショートカグール)

SS13コレクションのアイデアを練るため、ビンテージ服リサーチの旅に出ていた時の事だ。Nigelはとても興味深いビンテージのNaval Smockを見つけ、それがNigel Cabournのオーセンティックアウターウェア製品の開発に先駆的な役割を果たすことになった。このフード付きの綿製のアイテム(写真参照)は、ハーフジッパーと胸ポケットがとても特徴的だ。そしてこのアイテムを裏返しにしてみると、ラグランスリーブと胸ポケットの裏側の部分がシームテープで処理されている事がわかった。とても古いビンテージなので、既にスモック全体の防水性はほとんどなくなっているが、裏側につけられたシームテープは比較的しっかり固定されたまま残っていた。これがベンタイル製アウターウェアのシームシーリングのユニークな工程を開発するきっかけとなったのだ。シームシーリングのテクニック自体は色んな形で既に存在し、特に人工繊維を使った機能性アウターウェアに取り入られているケースが一般的だが、このNaval Smockのビンテージ品がきっかけで、Nigel100%ベンタイル製の製品にこのテクニックをただ適用するだけでなく、あえてベンタイル製のアイテムにベンタイルテープでシームシールすることにこだわることにしたのだ。


Nigel Cabournにとって、生地の開発や選択はその特徴的なデザインに深く関わっていて、最終製品の中でも特に重要な要素となっている。生地のクオリティーや製品の構造において一切の妥協をしないことはNigelにとって必須事項であり、それによってオーセンティックラインが独自の位置に立っていることに大きくつながっているのである。
実際に、イギリスの工場の有する高い生産クオリティーを保つために、そしてNigelが頭の中で描いた特別なシームシーリングを現実化させるために、新しくシームシーリング専用のマシンを工場と共同で購入したのだ。


SEAM SEALING(シームシーリング)
ベンタイル製のシームテープ開発には時間がかかり、とても困難な作業であった。シームテープのベンタイル生地が高水性なため、生地への糊付作業が難しく、また、テープが洋服の縫い目にうまく接着しなかったからだ。当初のテストではどうにかうまく行くかと思ったが、結果的には専門業者に全く新しく接着強度の高い接着剤を開発してもらうというとても大掛かりな作業となった。

結果的には、製品の防水効果を飛躍的に高めただけでなく、Nigelがデザインする上で新たな角度から興味をもつことになるきっかけにもなったのだ。まず接着剤をベンタイル生地につけ、シームテープ用に適度な幅でカットしたものをテープとして使用することでこの工程が完成し、そして同色や配色のシームテープをデザインに応じて使用することで、Naval Smockのデザインに見られるユニークなシームテープを取り入れる事ができたのだ。


シームテープを開発する工程だけを見ても分かるように、実際の製品にシームテープをうまく貼るためにはまだ乗り越えないといけない道のりがあった。例えば、縫い目が重なっている部分やカーブしている部分等にはなかなかうまくシームシールできなかったりと、完全にこの工程を完成させるにはまだ多くの制限があったため、各アイテムの縫い目1本ずつ、その構造や仕上げをそれぞれ検討する必要があったのである。
そして結果的には製造速度に影響も出てきたため、簡素化してデザインからシームシールというアイデアを省くべきではないかというプレッシャーもあった。しかし、デザインにおいて妥協を許さないと考えるNigelにとって、安易にあきらめて簡素化するという考えは一切なかったのだ。

こうして開発されたベンタイル生地のシームシールテクニックは、2013SSコレクションのCameraman Jacket Sealed (カメラマンジャケット・シールド)、Air Craft Jacket Sealed (エアクラフトジャケット・シールド)、そして、Short Taped Smock(ショートテープスモック)の3つのデザインを通して公開された。


SHORT KAGOUL AW13(ショートカグール AW13
Short Kagoul (ショートカグール)は、様々なデザイン要素と工程を組み合わせる事で、ユニークなアイテムを創りだすことができるということがよく分かる一例だ。Naval Smockのビンテージ品は、シームシール開発の工程に直接的な影響を与えただけでなく、SS13 Short Taped Smock (SS13ショートテープスモック)、そしてShort Kagoul AW13(ショートカグールAW13)のデザインのインスピレーションとなった。
しかしNigelは更に一歩進み、新しい冬のコレクション用に新たなシリーズの製品開発にチャレンジしようと試みたのだ。

Short Kagoul (ショートカグール)の生地を見て頂くと分かるが、無地もしくはダブルプリントのL28ベンタイルがベースとなり、AW13コレクションの多くの型で使われている。L28ベンタイルはSS13コレクションで使われたL34ベンタイルよりも過酷な環境でも絶えられる生地だ。

Short Kagoul AW13 (ショートカグールAW13)は実際、Naval SmockRAF Holdall、そして、南極探検隊が試着したビンテージのAntarctic Expedition Smock3点から取り入れた要素をミックスさせて生み出した製品である。

ANTARCTIC EXPEDITION SMOCK(南極探検隊のスモック)

写真にあるのはロンドンのビンテージディーラーのオフィスで見つけたレアなビンテージ品である。このスモックはそもそもアメリカの南極探検リサーチプログラムに属し、その趣旨で着用されたものだ。 このアイテムの注目点はフロントのハーフジッパー部分にストームガゼットがついていて、その裏側に過酷な環境での保温性の為に毛皮がついている点である。そして、ジップアップして首元のベルクロを閉じると顔のほとんどが覆われる深い大型フードも特徴的だ。このフードの内側にはシープスキン、外側にはコヨーテファーが施されていて、更に保温効果を高めている。 スモックには両側から手を入れる事ができるカンガルーポケットと、ベルクロで閉める事のできるハンドウォーマーポケットがついている。こういった特徴的なディテールは、Short Kagoul AW13(ショートカグールAW13)のデザインにおいて少し変更して採用したが、コヨーテファーとシープスキンの組み合わせはそのオーセンティックさを残すためにそのまま採用した。




服のデザイン工程で、ビンテージ服をそのまま参考にしても決してうまく行く事はない。実際に、ビンテージ服を今着てみても、不都合な部分が出てくることが多いのである。それは、ほとんどのビンテージ服がそれぞれの目的に沿って作り出されているからだ。

ビンテージ南極探検隊用スモックはその顕著な一例だ。大きなシルエットで、コウモリの翼のような形状のピボットスリーブがつき、何枚も重ね着した上に着用する目的で作られたオーバースモックなので、現代的に着用しようとすると、大きさや形の度が越えてしまう。また、現代的なShort Kagoul(ショートカゴール)のシルエットを開発する過程で、脱ぎ着しやすい仕様にするというのも新たなチャレンジとなった。

全体のフィットをビンテージよりも細身にしたプルオーバーのジャケットには、フロントジッパーを深めに変更し、更にサイドにもジップを加えて脱ぎ着が簡単にできるような仕様にした。そしてここで3番目のデザイン要素が表れるのである。

GIANT ZIPPER(ジャイアントジッパー)

ユニークな付属はNigel Cabournのオーセンティックな製品のもう一つの特徴である。Nigel Cabournの付属は、ラベル、ジッパー、ボタン、スタッズにかかわらず、ほぼ全てがブランドの指示通りに特別開発された別注品である。Short Kagoul AW13(ショートカグールAW13)の付属もその例外ではない。


フロント部のハーフジッパー、そして着用しやすくする為に側面に追加した14号サイズのジッパー(実際は13号なのだが、Nigelは迷信を信じて13という数字が大嫌いなために14号と呼んでいるだけ)がShort Kagoul AW13(ショートカグール AW13)の特徴だ。これはミリタリー用に作り出されたジッパーで、商用的には手に入らないものなのだが、あるバッグ工場のアーカイブコレクションの中のビンテージRAF HOLDALLに使われていたものを見つけたのがきっかけだった。特徴的でシンプルな型抜きメタルプレートのジップ引き手は、まさに第二次世界大戦中にイギリス軍が採用していたものと同様のものであった。


これがShort Kagoul AW13(ショートカグールAW13)のデザイン開発秘話の最後の部分になる。このジップの引き手はNigel Cabournのオーセンティック製品用に作られ、表面には「Authentic」、裏面には「England (イギリス)」とスタンプされているので、他のブランドのどんな製品にもこれと同じジップが使われているのを見ることは決してないのである。


Short Kagoul AW13(ショートカグールAW13)は、Nigel Cabournのオーセンティックなデザインが出来上がるまでの工程を説明するために最適の例だ。ビンテージNaval Smockからインスパイアされたところから始まり、新しく開発したシームシーリングの工程をSS13 Short Taped Smockで取り入れ、更にデザインやアイデアを進化、改良させてShort Kagoul AW13(ショートカグールAW13)につなげていったということだ。

ここから何処へいけるかって?具体的には分からないが、それが何処であれ、ブランドが進みつづける場所がエキサイティングでオーセンティック(本物)であることは確信して頂いて大丈夫だ。


【取り扱い店舗】

THE ARMY GYM TOKYO
 03-3770-2186 

Nigel Cabourn JR大阪三越伊勢丹
06-6341-1213 


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